最小二乗円

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 真円度は、円筒や円孔を持つ部品の表面形状の座標データを元に測定します。
 この計算には、その部品の使用条件に基づいて、最大内接円法、最小外接円法、最小領域法、最小二乗法の中から適切な方法を選択して行います。

 JIS(B0621:1984)では、真円度は2つの同心の円が挟む最小領域の幅という定義となっているため、基本的には最小領域法(Chebyshev多項式によるMinimax法)になりますが、他の方法であっても真円度評価は行われます。

 中でも、最小二乗法による基準円(平均円)の算出は、連立方程式を解くことで可能なため、比較的容易な方法です。
 ここでは、この最小二乗法による円の中心と半径を求める方法について解説しています。

 右図は、Excelでの乱数生成による疑似測得円データを用いて、最小二乗円を計算した例です(測得データ(extracted data)とは、計測して得られたデータのこと)。

 最小二乗円の中心座標が求まれば、その点から最も遠いデータ点までの距離(最小外接円の半径)から、最も近いデータ点までの距離(最大内接円の半径)を引いたものが、真円度となります。

 なお、JIS B7451の附属書2には、ここで紹介した方法とは別の、近似式による最小二乗円の中心と半径を求める方法が記載されています(右式)。

 この式でも、比較的良好な近似解を得られますが、最小二乗法を用いた厳密解と比べると多少誤差があります。
 ただし、この近似式を適用する場合は、データ点が円周方向に均等かつ4の倍数個となる(x,y軸上にデータ点が存在する)ようにした方がよいでしょう。

 最小二乗円の、
  中心座標 (a, b)、半径 R
 データ点の、
  個数 n、座標 (xi, yi)
  (a, b)からの距離 ri
 とすると、

  a = 2・∑xi / n
  b = 2・∑yi / n

  R = ∑ri / n

 

<参考規格>
・JIS B0621:1984 幾何偏差の定義及び表示
・JIS B7451:1997 真円度測定機
・ISO 4291:1985 Methods for the assesment of departure from roundness-Measurement of variations in radius

<参考URL>
一般式による最小二乗法(円の最小二乗法)
最小二乗法による円の近似 (検算用)

 



 

 


最小二乗円計算Excel

 本記事で解説した手順に基づいて、最小二乗法を用いた近似円を計算するExcelシートです。

 「乱数生成」ボタンを押すと、疑似測得データが生成されますので、その後「計算」ボタンを押すことで、最小二乗円の中心座標と半径値、および真円度が計算されます。
 なお、N列とO列のx,y座標のセル内の数式を無視して、データを入力後に計算ボタンを押せば、その座標値を基にした計算を行います。その場合は、元ファイルのバックアップをとっておいて下さい。

 検算のため、マクロで計算した値と、ワークシート関数を使って計算した値の両方を出力させています。

 revB1から、JIS B7451に記載の近似式による計算結果も表示しています。
 

 

 


2025.2.10 更新 (revB1→revB2)

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