包絡の条件

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包絡の条件に関する解説です。

 包絡の条件(envelope requirement)は、寸法のばらつきと形状のばらつきの相補関係を考慮した、付加指定です。
 これは、ISOやJISの製図ルールの基本である「独立の原則」に、はめあいを合理的に成立させるための特別な指示として、追加されています。

 ASME(アメリカ機械学会)の規定には、包絡原理(envelope principle)というものがあり、ASME規格に準ずる図面では、特に指示のない限り、サイズには「包絡の条件」が適用されている、と解釈します。

 なお記事中のJISの定義での「最大実体実効状態」(MMVC:Maximum Material Virtual Condition)は、完全形状(例えば曲がりのない形状)が最大実体サイズ(MMS)で出来上がっている状態を指しています。
 最大実体公差方式(MMR)における最大実体実効状態とは、形体が最大実体サイズで、なおかつ幾何偏差(例えば中心線の曲がり)が幾何公差によって規定された値となっている状態、つまりこれ以上形が崩れないであろう設計上の許容限界形状を包絡する、仮想的な(virtualな)完全形状のことを指します。
 最大実体実効サイズ(MMVS)は、この完全形状のサイズ(平行2面間の距離寸法や円筒の直径寸法など)のことです。
 ちなみに、MMVSで作製された検査用のゲージは機能ゲージと呼ばれます。

 

<参考規格>
・JIS B0420-1:2016 製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ
・ISO 1101:2017 GPS-Geometrical tolerancing-Tolerances of form, orientation, location and run-out
・ASME Y14.5-2018 Dimensioning and Tolerancing

 


 


 

キーワード
ASME,テーラーの原理,JIS B0420,最大実体状態,最大実体実効状態,包絡面,嵌め合い,サイズ,幾何公差